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795)敷引特約は違法であると言う最高裁裁判官が一人出現した

 敷引特約については、平成23年3月29日の最高裁第一小法廷の判決によって合法的と認められた。

 私は、この最高裁判決は間違った考え方の判決であると、鑑定コラム781)「敷引特約は合法であると最高裁は認めた」で、私の考えを述べた。

 そのコラム記事の中で、一人くらい違法であると主張する最高裁裁判官がいても良いではないのかと思い、次のごとく記事で述べた。

 「第一小法廷の7人の裁判官全員の意見が一致して判決すると判決文に書かれているが、裁判官の中で一人くらい「破損の実地検分も行わず契約書での契約金額が明示してあるからと言って21万円の控除は、借地借家法の強行法規の性格から見て違法である」という意見を述べる人がいてもよいと私は思うが。」

 平成23年7月12日、最高裁第三小法廷は、敷引について判決を下した。
 事件番号は、平成22(受)676 保証金返還請求事件である。

 その最高裁の判決内容は、平成23年3月29日の最高裁第一小法廷の判決内容と同じく、敷引特約は合法であるという内容の判決である。

 平成23年3月29日の最高裁判決と違うのは、敷引特約は違法であると言う意見を述べる裁判官が一人いたということである。

 その裁判官は、岡部喜代子裁判官である。

 事件の概要を判決文が述べる内容から記すれば、下記の通りである。

 ・案件所在 京都市左京区上高野西氷室
 ・賃貸借の目的  マンションの一室
 ・賃料 月額175,000円
 ・期間 平成14年5月23日より2年間
 ・保証金 100万円(預託金40万円、敷引金60万円)

 平成20年5月31日賃貸借契約は終了し、賃借人は賃貸人に保証金の返還を請求したところ、賃貸人は保証金より敷引金60万円を控除したのち、原状回復費(含む明渡し遅延損害金等)として208,074円を更に控除して、残額として191,926円を賃借人に返還した。

 この賃貸人の行為に対して、賃借人は怒り、訴訟になったのである。

 この敷引特約は違法であると岡部喜代子裁判官は主張するが、その前に敷引金の性格について、岡部喜代子裁判官は次のごとく述べる。

 「敷引金は、損耗の修繕費(通常損耗ないし自然損耗料)、空室損料、賃料の補完ないし前払、礼金等の性格を有するといわれており、その性質は個々の契約ごとにことなるものである。」

と、敷引金の性格を定義する。

 つまり、敷引金を形成するものは、
 @ 損耗の修繕費
 A 空室損料
 B 賃料の補完
 C 賃料の前払
 D 礼金の性格等
であると言う。

 そうした5つの性質を持つものとすると、賃借人は当該敷引金がそれのどれに該当するものなのか、或いは5つの性質がどの位の割合で敷引金を形成しているのか知る必要がある。

 これについて、岡部喜代子裁判官は、次のごとく述べる。

 「賃借物件を賃借しょうとする者は、当該敷引金がいかなる性質を有するものであるのかについて、その具体的内容を明示されてはじめて、その内容に応じた検討をする機会が与えられ賃貸人と交渉することが可能となるべきというべきである。」

 賃貸人は、敷引金の性格について、具体的な内容を明示していない。
 このことから賃借人は、敷引金がどれに相当するのか判断出来ず、それが適正であるか否か判断することも出来ない。このことは信義則の義務に反すると、岡部喜代子裁判官は、次のごとく述べる。

 「賃貸人たる上告人は、本件敷引金の性質についてその具体的内容を明示する信義則上の義務に反しているというべきである。」
と。

 そして、敷引金の金額に対して、他の4人の裁判官は、月額支払賃料の約3.5倍は高額でなく被上告人(賃借人)の利益を一方的に害するものでは無いと判示するが、岡部喜代子裁判官は、この4人の最高裁裁判官の考え、判断に対して、真っ向から反対する。
 以下のごとく述べる。

 「本件敷引金の額は、月額賃料の約3.5倍に達するのであって、これを一時に支払う被上告人の負担は決して軽いものではないのであるから、本件特約は高額な本件敷引金の支払義務を被上告人に負担させるものであって、被上告人の利益を一方的に害するものである。」

と述べる。

 そして、本件特約(敷引特約)は、

 「消費者契約法10条により無効と解釈すべきである。」

と判示する。

 結論として、

 「本件特約が無効であるとした原審の判断は、以上と同旨をいうものとして是認することができる。論旨は理由がなく上告を棄却すべきであろう。」

と結論する。

 私は、この岡部喜代子裁判官の考え方を全面的に支持する。

 100万円の保証金のうち、60万円を敷引と称して貸主は懐に入れ、なおかつ20.8万円を理由にならない屁理屈を付けて、賃貸人は懐に入れる。
 100万円の保証金のうち、預け入れした賃借人にたいして戻ってきたのは19万円余でしかない。80.9%が戻ってこないのである。

 この様な賃貸人の身勝手な不合理な行為を、正当な行為とどうして云えるのであろうか。
 借地借家法の存在が全くないでは無いのか。
 裁判官は一体何処を向いて、物事の良し悪しを判断しているのか。

 訴訟の案件は、京都市左京区上高野西氷室のマンションであった。
 駅で言うと「宝ヶ池」である。
 「宝ヶ池」駅勢圏の賃貸マンションの募集事例をネットで調べて見た。
 面積50u以上の条件で調べて見た。平成23年8月11日現在である。

 アットホームでは、22件のうち3件が敷引償却で募集している。
 スーモウでは、32件のうち1件が敷引償却で募集している。
 京都府宅地建物取引業協会のホームページでの左京区のマンション募集は21件あり、その中で敷引償却で募集しているのは2件であった。

 6件の敷引償却をしている中で、内訳は次のごとくである。

  
  ・実費     4件
  ・保証金40万円の内、敷引金30万円
  ・保証金は支払賃料の3ヶ月で、敷引金はそれの40%

 「実費」という敷引償却と言うものはどういうものか私にはさっぱり分からないが。

 私は、京都の賃貸マンションは全て多額な保証金を授受し、そして60%というごとくの高額な敷引償却しているものと思っていたが、現実の賃貸マンション募集状態を調べると、敷金、礼金の授受はされているが、敷引償却を条件にしている賃貸マンション募集は余り多くないようである。


  鑑定コラム781)
「敷引特約は合法であると最高裁は認めた」

  鑑定コラム448)「あんたはん もっと京都について勉強しなはれ」

  鑑定コラム796)「敷引契約はマンション賃貸の4%たらず」

  鑑定コラム993)「岡部喜代子とは(2013年1月1日コラムアクセス)」

  鑑定コラム1101)「破棄差戻 春名鑑定士よくやった」


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