○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1229)霞ヶ関の政府刊行物センターは移転していた

 日比谷公園に面するビルに入っている弁護士事務所で、3人の弁護士と家賃訴訟の打合せを行い、帰りに霞ヶ関にある政府刊行物センターに寄って本を買おうと、同センターに向かった。

 農林水産省の南側の平家建の政府刊行物センターは閉まっていた。

 ガラス戸に張り紙が貼ってあった。
 移転先が示してあった。

 遠くに移転したとすれば、困ったなと思ったが、移転先は近かった。
 南の虎ノ門交差点方向に徒歩3分ほどのところに移転していた。

 中央官衙地区の南東のはずれにある旧郵政省(現日本郵政グループ)の建物の南側にある日土地のビルの1階に移転していた。

 虎ノ門の日土地のビルは良い場所にある。
 地下鉄虎ノ門駅から徒歩2分程度、日本の政府の中心心臓部である中央官衙地区に接して所在している。

 政府刊行物センターは、霞ヶ関の中央官庁建物から離れたが、中央官衙地区に接する日土地のビルの1階に入店出来て良かった。

 新店舗の従業員に、いつ移転したのかと聞くと、

 「丁度1年前です。」

という返事が返って来た。

 そうすると、私は1年以上も農林水産省の南側にあった旧政府刊行物センターを訪れていなかったということになる。

 私の大きくない書棚には、旧政府刊行物センターで購入した書籍がかなりある。

 消費者物価指数、部厚い20数年分の地価公示価格・県基準地の標準価格一覧、建設統計資料、有価証券報告書、日銀の各種統計表等である。

 それら資料を購入するために、その都度霞ヶ関に足を運んだ。

 インターネットに多くの資料データが発表されるようになって、それぞれの書籍は購入しなくなった。そのため旧政府刊行物センターに行くことは少なくなった。

 政府刊行物センターがどういう理由で長年営業していた農林水産省南側の店舗から、現場所に移転することになったのか、その理由は私には分からない。

 書籍の売り上げダウンも、移転の理由かもしれない。

 政府刊行物センターも書店の1つであると思うが、日本の書店数の減少、書籍売上高の減少が著しいと聞く。

 書店数の減少、書籍の売上高の減少について少し調べて見た。

 日本出版インフラセンター(JPO) の書店マスタ管理センターが発表しているデータによると、坪有り店舗数は2013年度末で11,713店である。

 「坪有り店舗数」というおかしな表現の数値であるが、これは売場面積を持たない書店を除くということである。

 書店の店舗には売場面積ゼロという店舗があるようだ。
 「坪有り店舗数」が、書店の実数ということのようである。
 
 JPO発表の過去の「坪有り店舗数」を記すと、下記である。

             2003年度      13,661
             2004年度      13,325
             2005年度      12,775
             2006年度      12,452
             2007年度      12,079

   2008年度      11,689    2009年度      11,578    2010年度      11,404    2011年度      11,206    2012年度      12,113
   2013年度      11,713

 2003年以降書店数は減少している。
 2012年度に増加を示したが、2013年度で再び減少してしまった。

 どこまで減少するか私には分からないが、1万店舗を切るであろうと予測している人もいる。

 店舗数は10年前と較べて1,948店舗減っているが、店舗面積は逆に増えている。

 店舗面積は、下記である。

             2003年度      1,096,532坪
             2013年度      1,319,779坪

 店舗数が減ってるのに店舗面積が増えているということは、店舗面積大の大型書店が増えているということになる。

 店舗面積と店舗数を見ると、下記である。

                  300坪以上          1〜49坪

  2003年度 587 6,887 2013年度 1,120 5,598

 売場面積1〜49坪の小さい書店が閉店し、300坪以上の大型書店が増えているということになる。

 云って見れば、大型店舗の進出によって、小さい店舗がそれに顧客を奪われて閉店しているということになる。

 何故書店が減るのか。

 私は出版業界の状況をあまり知らない。
 出版ジャーナリストでもない。

 外野から見た範囲で述べる。

 電子書籍の出現が書店減少の原因という意見があるようである。

 しかし私は、それは主原因では無いと思う。
 幾つかの原因の一つであろうが、それが主原因とは思われない。

 原因の主たるものは、小規模書店の売上高の大きな収入源であった「雑誌」が売れなくなり、収入が入ってこなくなったことによると判断する。

 雑誌が売れなくなったのは、電子書籍の出現によるのだというと堂々巡りになるが、雑誌の売れなくなった要因は別のところにあろう。

 それを突き止めることは、業界の人がやることであり、ここで私が考えることではない。

 売場面積50坪の店舗にあらゆる種類の書籍を並べるのは不可能であろう。
 狭い売場を効率良く回転させるには、最も売れる雑誌に書店経営者が頼るのは当然であろう。

 その売上高の柱である雑誌が売れなくなってくれば、収入が落ち、経営がおかしくなるのは当然であろう。

 もう一つの原因は、日本の書籍販売ルートの慣習の存在である。

 私は、書籍販売は、出版元の出版社から書籍小売の書店に本の配本ルートが直接つながっているのが最も良いと思っているが、日本の書籍販売はそうなっていない。

 出版社と小売書店の間に、二大書籍販売卸会社が存在し、この卸会社を通さないと、書籍の販売が出来ない。

 この書籍販売ルートが、長い年月を経て出来上がっている。

 地方の書店に読みたい本が無く、書店に取り寄せを頼むと、その注文は書籍の販売ルートを逆走して、出版社の手許に届く。
 注文の本は、再び販売書籍ルートを通じて、地方の書店に届けられ、注文者に届く。

 そのため注文してから1〜2週間の時間がかかる。

 この日本の書籍販売ルートの慣習をぶっ壊したのが、アメリカのアマゾンである。

 ネットからアマゾンに本を注文すれば、2〜3日で手許に届く。
 アマゾンの利用者が増えるのは、当然であろう。

 話はそれるが、アマゾンが、日本の高速道路インターチェンジに近いあちこちで倉庫を建設している。何の倉庫なのかは、説明しなくても分かろう。

 その倉庫建設に伴い土地、建物建設に金が動いている。
 倉庫に働く人の雇用が創設される。

 それた話を元に戻す。

 アマゾンの日本での書籍販売額が2千億円とか2千500億円とかいわれている。
 その金額は、日本の書籍販売トップの紀伊國屋書店1082億円、ジュンク堂513億円を併せた金額よりも多い。

 アマゾンは、2000年に日本に上陸したに過ぎない。何故、10年と少しでそこまでの売上高を伸ばすことが出来のか。

 日本の紀伊国屋書店、ジュンク堂が、他国に上陸して同じ事を成し遂げることが出来るのであろうか。

 書籍の売上高については、公益社団法人出版科学研究所の『出版月報』2014年1月号の「特集 2013年出版物発行・販売概況」で知ることが出来る。

 その統計調査によると、2013年1年間の出版物の売上高は、1兆6823億円である。
 内訳は、

        書籍     7,851億円
        雑誌     8,972億円

である。

 過去の売上高を記すと、下記である。

      1993年    24,900億円
      1994年    24,426億円
      1995年    25,897億円
      1996年    26,564億円
      1997年    26,374億円

     1998年    25,415億円      1999年    24,607億円      2000年    23,966億円      2001年    23,250億円      2002年    23,105億円
     2003年    22,278億円      2004年    22,428億円      2005年    21,964億円      2006年    21,525億円      2007年    20,853億円
     2008年    20,177億円      2009年    19,356億円      2010年    18,748億円      2011年    18,042億円      2012年    17,398億円
     2013年    16,823億円

 1996年の2兆6564億円がピークである。

 その時の書籍、雑誌の売上高は、

        書籍    10,931億円
                雑誌    15,633億円

である。

 それ以降、売上高の減少は続く。
 ピークより、

        全体    0.633
                書籍    0.718
        雑誌    0.577(注)

 (注) 雑誌の売上高ピークは、1997年であるが。1996年の売上高で計算する。

 雑誌の売上高減が激しいことが、上記減少率を見れば分かろう。

 書店1店舗当りの売上高は、

                   16,823億円
                ─────── = 1.43億円                          
                    11,713

1.43億円である。

 坪当り売上高は、

                   16,823億円
                ─────── = 0.0127億円                        
                   1,319,779
年間127万円である。月間坪当り売上高は、10.6万円(127÷12≒10.6)である。

 出版科学研究所の調査発表数値を見て、驚いたのが一つあった。
 それは、金額返品率という数値である。

        書籍    37.3%
        雑誌    38.8%

という数値である。

 「何これ?」

と云いたくなる。

 書店に押し込んだ本の1/3強が、発行出版社に返品されるのである。

 売れなかったからと仕入れた本が返品出来るというのである。

 この制度は少しおかしいのではないか。
 リスクを取るのは一体誰なのだ。

 以上書店について少し述べた。

 最後に本題からずれるが、書店に関係することから、少し宣伝を。

 書店の賃料はいくらが適正か。

 2000年発行の『Evaluation』創刊号p42(清文社)の「売上高に対する家賃割合」(田原)で店舗売上高に対する家賃割合が分析されている。その分析によれば書店の賃料は、売上高に対して、

             書籍雑誌小売                 4.2%

である。


  鑑定コラム18)
「店舗売上高と家賃割合」

  鑑定コラム1236)「不動産業 最適資本金は200億〜400億円」

  鑑定コラム1371)「宮崎で市内地図を購入するに一苦労」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ