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1817)千葉県不動産研究会での正規分布・回帰分析の講演

 2018年8月23日に千葉県の不動産鑑定士の任意の団体である「千葉県不動産研究会」(会長藤田宗晴不動産鑑定士、幹事長佐藤元彦不動産鑑定士)から講演を頼まれたので、その講演のために千葉市に行って来た。

 千葉市内のビルの5階の小ホールに、40人程度の不動産鑑定士が参加されていた。公益社団法人千葉県不動産鑑定士協会会長の増間真一不動産鑑定士も参加されていた。同協会の総会懇親会のお誘いの御礼を改めてした。

 「千葉県不動産研究会」は、「千葉県の裁判所の競売、訴訟鑑定等裁判鑑定について常に研鑽をする不動産鑑定士の会」と聞く。

 同会の講演は、今回も含めて4回目の講演である。いずれも3時間の講演である。

 今までに話した講話は、次の様なものであった。

    1.明渡立退料について
        2.26年改正鑑定基準に伴う継続賃料について
        3.家賃と地代の具体的な鑑定例

 今年は、下記3つをテーマにした講演を行った。

    1.正規分布
    2.回帰分析
    3.田原著書の還元利回りの求め方の批判についての反論

 3番目の最後のテーマは、「鑑定は科学である」という私の考え方から、著書に発表している還元利回りの求め方の自画自賛的な再認識の内容のものである。

 今回の正規分布、回帰分析についての講話のテーマについては、2018年6月8日に開かれた公益社団法人千葉県不動産鑑定士協会(会長 増間真一不動産鑑定士)の年次総会の懇親会に招かれた時、協会長増間真一氏から「正規分布・回帰分析について分かり易く話してくれないか」という提案があったことから、では話そうかと決めたものである。

 千葉県不動産研究会の会長である藤田宗晴氏が講演の始まる前の挨拶で、不動産の取引事例、賃貸事例のコンピュータによる大量データ処理によって、価格・賃料評価は、AIに置き換わってしまうのでは無いのかと云う危機感を持った内容のことを話されていた。

 そして、データの大量処理から答えを求めるAIに負けないように、正規分布、回帰分析とはどういうものかの知識を知る必要があるという類のことを述べられていた。

 正規分布の講話であるから、一例として正規分布を利用した中古マンションの品等区分の話をしたが、その講話録の一部を下記に記す。

 千葉県での話であることから、千葉市中央区の中古マンション売買価格からu当り単価を求め、その単価より、千葉市中央区の中古マンションの品等区分を次のごとくとする。

@ 中古マンションの品等区分

    イ、並のマンション 
            築後古く中級と云えないマンション
    ロ、中級マンション
      並のマンションでもなく、と言って高級マンションでもないマンション。3つに区分する。
                中の下
        中
        中の上
    ハ、 高級マンション
      中級マンションより品等が上で、超高級マンションとは云えないマンション
    ニ、 超高級マンション
      金持ちしか買えないマンション。100棟のマンションがあるとし、その2〜3棟しかないレベルのマンション
 
A 偏差Z値による価格区分

 上記内容のマンションを、偏差Z値を使って、次のごとく価格配分する。
    イ、並のマンション
                      偏差Z値  −1.0以下
    ロ、中級マンション
      中の下  偏差Z値 −0.25〜−1.0

      中    偏差Z値 −0.25〜0.25

      中の上  偏差Z値 0.25〜1.0

    ハ、高級マンション   偏差Z値 1.0〜1.96

    ニ、超高級マンション   偏差Z値 1.96以上

B 千葉市中央区の中古マンションの取引価格例とZ値

 千葉市中央区の中古マンションの取引事例として、下記のものがあった。面積はuである。

 
  千葉市中央区マンション価格   平成30年7月      
             
番号 所在 マンション名 価格 万円 面積 u単価 万円 偏差値
1 青葉町 青葉の森公園 1680 97.30 17.27 -0.80
2 今井2 蘇我第一 400 36.92 10.83 -1.49
3 鵜の森町 ル・アール 1650 73.04 22.59 -0.23
4 生実町 生実マンション 200 45.30 4.42 -2.18
5 要町 ルイシャトレ千葉 2390 72.58 32.93 0.88
6 白旗2 蘇我ロイヤルフオート 1590 69.07 23.02 -0.18
7 新宿1 千葉グランドハイツ 930 67.57 13.76 -1.18
8 新宿2 タイムズアリーナ千葉 2800 81.06 34.54 1.06
9 新田町 グレース22 1480 62.40 23.72 -0.11
10 新町1 ラポール千葉新町 770 39.94 19.28 -0.58
11 神明町 ライオンズヴイアレー 1880 72.23 26.03 0.14
12 末広3 セザール蘇我 320 25.75 12.43 -1.32
13 千葉港7 ライオンズ千葉グランド 1980 60.63 32.66 0.86
14 千葉港2 レクサスシティ千葉 1700 70.05 24.27 -0.05
15 千葉港8 千葉港パークハウス 2250 75.27 29.89 0.56
16 千葉港3 サングランデ千葉みなと 2350 76.28 30.81 0.66
17 千葉港7 ウエリスガーデン千葉 3580 89.70 39.91 1.64
18 中央1 シャンポール第2 500 26.56 18.83 -0.63
19 中央2 アブレ千葉センター 1980 57.68 34.33 1.04
20 中央4 エクセレントトティ千葉 1680 43.24 38.85 1.52
21 中央港1 ブランズ千葉みなと 3000 85.42 35.12 1.12
22 中央港1 サンクタス千葉みなと 3000 76.07 39.44 1.59
23 鵜森2 デュオヒルズ 2580 71.37 36.15 1.23
24 出州港3 ロイヤルステージ 1898 66.45 28.56 0.41
25 道場北1 ライオンズM東千葉 1260 56.98 22.11 -0.28
26 道場北2 千葉パークハウス 1440 72.39 19.89 -0.52
27 問屋町3 サンクレイドル千葉 1980 72.17 27.44 0.29
28 問屋町8 ハーバーレジデンス 2100 72.04 29.15 0.48
29 長洲1 ライオンズM千葉県庁前 498 18.09 27.53 0.30
30 長洲2 スカイラークハイツ 900 62.58 14.38 -1.11
31 登戸1 千葉登戸レジデンス 2580 69.85 36.94 1.32
32 千葉2 千葉フラワーマンション 1150 60.32 19.06 -0.61
33 東千葉2 ハイラーク千葉 1000 68.80 14.53 -1.10
34 本千葉町 DIKマンション千葉 1800 119.04 15.12 -1.03
35 本千葉町 アンビシャスプラザ千葉 3280 81.90 40.05 1.65
36 本町2 千葉本町スカイマンション 1580 66.48 23.77 -0.10
37 本町2 ダイヤパレス千葉美術館 1970 63.36 31.09 0.69
38 本町3 ストークマンション 400 44.50 8.99 -1.69
39 南町2 南町コーポビアネーズ 290 23.10 12.55 -1.31
40 南町2 サンクレイドル蘇我南町 2180 63.50 34.33 1.04
41 都町 アインズコート千葉都町 1150 73.98 15.54 -0.99
42 宮崎町 ライオンズM蘇我 1200 66.04 18.17 -0.70
43 祐光2 サンクタス蘇我 1850 69.25 26.71 0.22
44 祐光2 千葉サニータウン 1280 74.20 17.25 -0.80
45 蘇我1 ガーデンコート蘇我 1690 61.00 27.70 0.32
  平均       24.71  
  標準偏差       9.29  


C 千葉市中央区の中古マンションの平均値、標準偏差

 上記千葉市中央区の45事例の中古マンション価格の平均値、標準偏差は、下記である。

                平均価格          u当り24.71万円
                標準偏差                 9.29

D 千葉市中央区の中古マンションの品等区分

 上記偏差Z値より、千葉市中央区の中古マンションの品等区分が分かる。

 イ、超高級マンション

 偏差Z値が1.96以上のマンションは無いことから、千葉市中央区には超高級マンションはないと云うことになる。
 
 ロ、高級マンション

 高級マンションは、偏差Z値が1.0〜1.96のマンションである。
 アンビシャスプラザ千葉、ウエリスガーデン千葉、サンクタス千葉みなと等10棟である。

 ハ、中級上マンション

 中級上マンションは、偏差Z値が0.25〜1.0のマンションである。  ルイシャトレ千葉、サングランデ千葉グランド、ダイヤパレス千葉美術館等10棟である。

 ニ、中級マンション

 中級マンションは、偏差Z値が−0.25〜0.25のマンションである。  ル・アール、グレース22、ライオンズヴイアレー、サンクス蘇我等5棟である。

 ホ、中級下マンション

 中級下マンションは、偏差Z値が−0.25〜-1.0のマンションである。
 青葉の森公園、ラポール千葉新町、千葉パークハウス等9棟である。

 ヘ、並マンション

 並マンションは、偏差Z値が-1.0以下のマンションである。
 生実マンション、千葉グランドハイツ、セザール蘇我等である。

 品等区分として話は終えたが、各マンションの偏差Z値が求められていることから、このZ値の値によって、マンションの比較検討、良し悪しの順位が分かる。

 対象マンションが属するマンション一棟の中で取引された取引事例が分かったとすれば、その中古マンションの価格は、このZ値の格差が地域格差及び個別格差となり、それに従えばたちどころに対象マンションの価格は求められることになる。

 となると不動産鑑定士の必要性がなくなるごとく思われるが、その価格が果たして適正であるか否かということを、別の観点から分析して、適正であること、不適正であれば適正価格を見つけなければならない。それを誰がするのか。

 3時間の講演を終えた後の懇親会で、参加者と美味しい酒を酌み交わしながら、不動産鑑定についての議論を戦わし、楽しい時間を過ごした。

 機会をつくって下さった千葉県不動産研究会の人々に感謝する。


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