○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1894)団地の高圧受電の変更決議は専有部分には及ばない 最高裁判決

 平成31年3月5日に、最高裁第三小法廷は、一団の団地の高圧受電の変更決議は、共用部分に及ぶものであって、専有部分にも及ぶものではないという自判決を出した。

 事件番号等は、下記である。

 「平成30年(受)第234号 損害賠償等請求事件 最高裁第三小法廷 平成31年3月5日判決」

 この最高裁判決は、私は、2019年3月8日頃に、最高裁がネットで公開している『裁判例情報』の「最高裁判例」で知った。

 マンションという不動産であるから、不動産鑑定評価にも関係がある判決かなと思い、最高裁の上記判決を読んだが、判決文は分かりづらい文章であり、内容であった。

 私は団地やマンションに住んだことが無いから、団地マンションの電気系統には疎いが、区分所有の団地マンションであるから、電気系統は共用部分と専有部分とは分かれているものではないのか。

 共用部分は電気料金が安くなる新受電方式にして、専有部分は、それぞれの区分所有者が電力配給会社と契約すれば、それで済むことでは無いのか、何を判決しているのかと判決内容がさっぱり分からず、そのままに記憶放置していた。

 2019年3月11日は、第69回目の田原塾がホテルニューオータニの小さい会議室で開かれた。

 講話の始まる前に、東日本大震災で亡くなられた人々に対して、哀悼の意を表すセレモニーとして1分間の黙祷をした。

 講話終了後の懇親会、そして二次会と飲みかつ語らいあって、自宅に帰ったのは、夜の12時を過ぎていた。

 当然怒る人もあり、酒の飲み過ぎを謝り、寝布団に潜りこみ、寝る前に夕刊に目を通した。

 日本経済新聞の2019年3月11日の夕刊である。

 1つの記事の見出しが目についた。

 その見出しは、「マンション544戸電力契約変更 2人反対で頓挫「適法」」という見出しであった。

 その記事を読むと、それは、前記した平成31年3月5日の最高裁の判決についての記事であった。

 日経の司法担当記者は、事件を追っかけていたのか、事件の内容をよく知っており、訴訟事件の内容を簡略に分かり易く述べ、裁判結果を伝えていた。

 その日経夕刊の記事内容の概略及び判決概略は、以下のごとくであった。

 札幌市のマンション一団地(5棟 544戸)の管理組合が、団地全体で高圧電力供給を受けると電気代が安くなると云う新受電方式に変更することと、その方式以外の電力受電を認めないという特別決議を行った。

 それに伴い、現在受電している北海道電力との供給契約を、各戸は解約する手続をとることを義務づけた。

 544戸のうち2人だけが、既存契約の解約に応じないために、新受電方式への変更は実現出来無かった。その為、組合理事が、新受電方式への変更に反対した2人を相手にして、新受電方式に変更していれば、電気代は安くなっていたと云って、差額の損害賠償を申し立てた事件である。

 一審、二審は、損害賠償を認めたが、最高裁は、下記のごとく判示して、原審の判断を否定する。

 「前記事実関係等によれば,本件高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には,団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決する部分があるものの,本件決議のうち,団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分は,専有部分の使用に関する事項を決するものであって,団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するものではない。したがって,本件決議の上記部分は,法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。このことは,本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。」

 この引用部分が、本判決の骨子である。

 この骨子の部分をもっと分かり易く記述してくれないものか。

 私が理解し難かった個所が、この骨子部分である。何を云っているのか分からなかった。

 それは「本件高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には,団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決する部分があるものの,」の文章の最後で「あるものの」と続くことである。

 「あるものの」と言う文言が来れば、その後は否定する「・・・はない。」という文章になるべきものである。判決文は、そこに違う要因を入れて錯綜させて否定していることから、私は分からなくなってしまった。

 「あるものの」以下の判決文を読んでいて、判決の云わんとすることが分からなくなってしまったのである。

 建物の区分所有等に関する法律66条は、共用部分について述べているものであり、決議はその条文に従って行われるものである。

 とすれば、「あるものの」と文章を続ける必要性は無かろう。

 「特別決議は共用部分の変更を行うものである。」とここで文章を切ればよい。

 そして、「それ故、専有部分の使用には特別決議は及ばない。」と判示すれば、分かり易い判決文となる。

 判決の判示は、上記のことを言わんとしているのではなかろうか。

 日経の記事は、判示をまとめて、

 「管理組合の決議の効力は、専有部分には及ばない。既存契約を解約する義務は無い」

と記している。

 どうも、当該団地は、共用部分である電気設備を通って専有部分に電力は供給されているようであった。その為、組合が共用部分の高圧受電の変更決議をしても、専有部分は、各人が北海道電力と契約している為、各人が北海道電力と契約解除しなければならなかった。

 それ故、2人が北海道電力との契約解除に応じなかったために、新受電方式の実行は行えなかったようである。

 共用部分の決議事項を専有部分にも及ばせることは、権利内容と建物利用目的が異なっていることから無理であろう。

 最高裁第三小法廷は、そのことを指摘したのではなかろうか。

 日経の夕刊記事を読んで、改めて最高裁判決を読み直して、日経記事は私の判決解釈の分からなかったところを補ってくれて、どうにか最高裁判決の内容を理解することが出来た。

 本判決を「札幌団地受電変更事件」とでも名付けておこうか。

 電気代が安くなると云って、既存電力会社との配電契約を変更しているのが多い。本件事件もそれに伴うものであった。

 2019年3月14日の日本経済新聞朝刊は、セブンイレブン・ジャパンが、電力調達先の見直しを行っているとして、下記のごとく報じる。

 「北海道では、2月、約800店舗で、電力調達先を新電力F-POWER(エフパワー、東京・港区)から北海道電力に切り替えている。」

 今回の判決は、最高裁第三小法廷の出した判決である。最高裁第三小法廷は今回の判決の他に、ここ最近、次々と新判断を示してくれる。

 それらの幾つかは、鑑定コラムに記事アップしている。下記である。

  ・鑑定コラム1883)「京都市固定資産税務課しっかりせい 最高裁判決」平成30年7月17日判決

  ・鑑定コラム1877)「大竹市大願寺公有地売却価格最高裁判決」平成30年11月6日判決

 区分所有建物に関する紛争であるため、「建物の区分所有等に関する法律」の知識が必要である。

 判決に出てくる同法律の関係条文を、下記に記す。

(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

(団地建物所有者の団体)
第六十五条 一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

(建物の区分所有に関する規定の準用)
第六十六条 第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項から第五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する。

 下記に、最高裁の判決を転載する。

****


平成30年(受)第234号 損害賠償等請求事件
平成31年3月5日 第三小法廷判決

主 文

原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
被上告人の請求をいずれも棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理 由

上告代理人平田直継の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 上告人ら及び被上告人は,いずれも札幌市内の区分所有建物5棟から成る総戸数544戸のマンション(以下「本件マンション」という。)の団地建物所有者である。

(2) 本件マンションにおいて,団地建物所有者又は専有部分の占有者(以下,これらを併せて「団地建物所有者等」という。)は,個別に北海道電力株式会社(以下「電力会社」という。)との間で専有部分において使用する電力の供給契約(以下「個別契約」という。)を締結し,団地共用部分である電気設備を通じて電力の供給を受けている。

(3) 平成26年8月に開催された本件マンションの団地管理組合法人(以下「本件団地管理組合法人」という。)の通常総会において,専有部分の電気料金を削減するため,本件団地管理組合法人が一括して電力会社との間で高圧電力の供給契約を締結し,団地建物所有者等が本件団地管理組合法人との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して電力の供給を受ける方式(以下「本件高圧受電方式」という。)への変更をする旨の決議がされた。 本件高圧受電方式への変更をするためには,個別契約を締結している団地建物所有者等の全員がその解約をすることが必要とされている。

(4) 平成27年1月に開催された本件団地管理組合法人の臨時総会において,本件高圧受電方式への変更をするため,電力の供給に用いられる電気設備に関する団地共用部分につき建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)65条に基づく規約を変更し,上記規約の細則として「電気供給規則」(以下「本件細則」という。)を設定する旨の決議(以下,上記(3)の決議と併せて「本件決議」という。)がされた。本件細則は,本件高圧受電方式以外の方法で電力の供給を受けてはならないことなどを定めており,本件決議は,本件細則を設定することなどにより団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付けるものであった。

(5) 本件団地管理組合法人は,平成27年2月,本件決議に基づき,個別契約を締結している団地建物所有者等に対し,その解約申入れ等を内容とする書面を提出するよう求め,上告人ら以外の上記団地建物所有者等は,遅くとも同年7月までに上記書面を提出した。しかし,本件決議に反対していた上告人らは,上記書面を提出せず,その専有部分についての個別契約の解約申入れをしない。

2 本件は,被上告人が,上告人らがその専有部分についての個別契約の解約申入れをすべきという本件決議又は本件細則に基づく義務に反して上記解約申入れをしないことにより,本件高圧受電方式への変更がされず,被上告人の専有部分の電気料金が削減されないという損害を被ったと主張して,上告人らに対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

3 原審は,前記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,被上告人の請求を認容すべきものとした。
 本件マンションにおいて電力は団地共用部分である電気設備を通じて専有部分に供給されており,本件決議は団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するなどして本件高圧受電方式への変更をすることとしたものであって,その変更をするためには個別契約の解約が必要である。したがって,上記変更をするために団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付けるなどした本件決議は,法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するから,上告人らがその専有部分についての個別契約の解約申入れをしないことは,本件決議に基づく義務に反するものであり,被上告人に対する不法行為を構成する。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 前記事実関係等によれば,本件高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には,団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決する部分があるものの,本件決議のうち,団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分は,専有部分の使用に関する事項を決するものであって,団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するものではない。したがって,本件決議の上記部分は,法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。このことは,本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。

(2) そして,本件細則が,本件高圧受電方式への変更をするために団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分を含むとしても,その部分は,法66条において準用する法30条1項の「団地建物所有者相互間の事項」を定めたものではなく,同項の規約として効力を有するものとはいえない。なぜなら,団地建物所有者等がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは,それのみでは直ちに他の団地建物所有者等による専有部分の使用又は団地共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし,また,本件高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず,この変更がされないことにより,専有部分の使用に支障が生じ,又は団地共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。
 また,その他上告人らにその専有部分についての個別契約の解約申入れをする義務が本件決議又は本件細則に基づき生ずるような事情はうかがわれない。

(3) 以上によれば,上告人らは,本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく,上告人らが上記解約申入れをしないことは,被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえない。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人の請求はいずれも理由がないから,第1審判決を取り消し,同請求をいずれも棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 岡部喜代子  裁判官 山崎敏充  裁判官 戸倉三郎  裁判官林 景一  裁判官 宮崎裕子)


  鑑定コラム1883)
「京都市固定資産税務課しっかりせい 最高裁判決」

  鑑定コラム1877)「大竹市大願寺公有地売却価格最高裁判決」



フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ