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2847) 破綻必至商法


1.はじめに

 内閣府の消費者委員会が、令和5年8月に『消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書』という報告書を発表した。

 同報告書のアドレスは、下記である。

 https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2023/doc/202308_torihiki_rule_houkoku.pdf

 その報告書の副題として「〜「破綻必至商法」を市場から排除して消費者被害を救済するために〜」が付けられていた。

 その報告書について述べる。

2.破綻必至商法とは

 その委員会の報告書には「破綻必至商法」という言葉が使われている。

 私は初めて耳にする言葉である。今迄にその様な言葉は無かったから、この消費者委員会が作った新造語である。

 その内容はどういうものか。

 それについて、同報告書はP10で、以下のごとく説明する。

 「@ 事業(事業の実施のために必要な行為を含む。以下同じ。)の実態がないにもかかわらず、
 A 金銭の出資もしくは拠出又は物品もしくは権利の提供(以下「金銭出資等」という 。)をすれば事業の収益により一定期間経過後に金銭その他の経済利益の配当等(以下単に「配当等」という。)を行う旨を示して消費者を勧誘し、
 B 多数の消費者に金銭出資等をさせ(金銭出資等をした消費者を「出資者」という。以下同じ。)、
 C そのため、新たな消費者を勧誘して金銭出資等をさせ、当該金銭出資等を原資として先行の出資者への配当等を継続的に行わざるを得ないスキーム。」

の事業商法をいうと説明する。

3.破綻必至商法の悪質性

 この破綻必至商法の悪質性については、同報告書P12で、次のごとく述べる。

 「破綻必至商法は事業の「実態」がないため事業による収益が見込めず、約束した配当を行うためには(出資金を−筆者加筆−)配当流用せざるを得ないスキームである。配当流用は出資された金銭等を事業に十分投資しないので経済的価値を生まず、かつ配当流用しなければ明るみになっていた配当の遅延(破綻状態)を隠蔽して新たな出資者の獲得を可能にして、新たな消費者被害者を産み出す悪質なものである。」

と悪質な商法であると共に、新たな消費者被害者を産み出し、消費者被害が拡大して行く危険な商法であると指摘する。

4.破綻必至商法の事案

 今迄に破綻必至商法に該当する事案として、同報告書は、次の事案を挙げている。

 @ 豊田商事事件
 A 安愚楽牧場事件
 B ジャパンライフ事件
 C ケフィア事業振興会事件
 D WILL事件
 E MRI事件

5. 破綻必至商法を止めて被害を回復する具体的方策

 同報告書は、破綻必至商法という新しい用語を造語し、破綻必至商法を止めて被害を無くすにはどういう政策が必要か提言する。

 その提言には、当然、既存法律の改定、新しい法律の作成が提言されている。

 どういう提言がなされているか、項目のみ記すと、下記である。

 @ 破綻必至商法の禁止の明確化
 A 破綻必至商法を停止させる為の行政処分の創設
 B 行政庁による破産申立権限の創設
 C 違法収益剥奪のための行政手法の創設
 D 会社法の解散命令の活用・拡充

6.消費者委員会の構成委員とオブザーバー

 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの委員・オブザーバーは、下記の人々である。

 @ 構成員
   後藤 巻則    早稲田大学名誉教授
   黒木 和彰    弁護士
   木村 たま代   主婦連合会事務局長

 Aオブザーバー
   大石 美奈子   公益社団法人日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会前代表理事・前副会長
   清水 かほる   公益社団法人全国消費生活相談員協会中部支部長
   板谷 伸彦    特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事
   川井 敏裕    東京大学大学院法学政治研究科教授
   中川 丈久    神戸大学大学院法学研究科教授
   丸山 絵美子   慶應義塾大学法学部教授
   山本 和彦    一橋大学法学部教授

 上のメンバーの誰が、「破綻必至商法」という言葉を思いついたのであろうか。

 大変良いネーミングである。素晴らしい創造力である。


 提言した消費者委員会は言及していないが、「100万円の出資で7%の利回り」と言って、2000億円の巨額出資金金額を集めた成田プロジェクトの「みんなで大家さん」は、正に「破綻必至商法」の事業に該当する。

 それ以前に、「みんなで大家さん」は、不動産特定事業法第2条3項1号違反の行為を行っており、かつ、その配当は、不動産特定事業法第2条3項1号違反の違法配当である。


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