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889)イオン一社の売上高は、全百貨店の売上高をしのぐ。5年後に

 百貨店高島屋の鈴木弘治社長が、一つの予想を述べた。
 驚くべき予想である。

 2012年4月6日の同社決算発表の席で、百貨店の市場について、

 「5年間で1兆円減り、2016年には5兆2000億円まで縮む」

という予想を述べたことを、2012年4月7日の日本経済新聞は報じる。

 日経の記者は、高島屋の社長の上の発言を受けて、

 「2014年2月期に6兆円を目指す小売大手イオン一社の売上高を下回ることになる。」

と記す。

 つまり、

 「5年後にはイオン一社で、全百貨店の売上高を凌ぐ」

ということである。

 日本の百貨店の雄の一つである高島屋の社長が、百貨店が束になってかかっても、5年後にはイオンという一つの会社の売上高に及ばないという予想を発言するとは。

 百貨店の売上高の伸びが、今後それだけ無いということを自らが肌で感じていること故の発言であろう。
 
 「5年後にはイオン一社で、全百貨店の売上高を凌ぐ」と、百貨店の売上高が落ちるということは、「百貨店業」そのものが、消費者のニーズをくみ取っていないと云うことになろう。

 日本百貨店協会のホームページによれば、同協会の会員数は86社243店舗である。

 過去の売上高の推移は、下記の通りである。

     2005年   7,841,459,564千円
     2006年   7,770,044,238千円
     2007年   7,705,225,250千円
     2008年   7,381,364,215千円
     2009年   6,584,111,762千円
     2010年   6,292,121,866千円
     2011年   6,152,565,690千円

 百貨店の売上高は、2005年以降一貫して減少している。

 一方、イオンの売上高は、同社の決算書より見ると、下記の通りである。単位百万円。

     2007年   4,824,775百万円
     2008年   5,167,366百万円
     2009年   5,230,786百万円
     2010年   5,054,394百万円
     2011年   5,096,569百万円
     2012年   5,206,132百万円

 2011年2月期のイオンの売上高は、5.1兆円である。
 同年の百貨店86社の売上高は、6.15兆円である。
 
 イオンの過去5年の売上高の増加は、

          5,206,132百万円
               ─────────   = 1.079                        
                 4,824,775百万円

7.9%の増加である。5年間の単純年間増加率は、

              7.9%
          ──────  = 1.58%                                   
               5

である。

 イオンが現在の状況で5年間売上高が伸びたとすると、5年後の売上高は、

       5,206,132百万円×1.079=5,607,416百万円 
 
である。

 一方全国百貨店の最近5年間の売上高減少率は、

          6,152,565,690千円
       ───────────  = 0.792                             
          7,770,044,238千円

である。5年間で△20.8%の減少である。単純年間減少率は、

               △20.8%
             ──────  = △4.16%                             
                  5

である。

 全国百貨店が現在の状況で5年間売上高が減少したとすると、5年後の売上高は、

     6,152,565,690千円×0.792=4,872,832,026千円
  
である。2012年の数値は筆者の予測では6.07兆円であるが、それは予測であり、確定数値は現在進行中のもので物理的にも時間的に無理であり、未発表であることから、2011年の数値を使用する。

 まとめると、

    イオンの5年後の売上高         5,607,416百万円
    全国の百貨店の5年後の売上高          4,872,832百万円

である。

 5年後には、イオンの売上高は全国百貨店の売上高を超えていることになる。

 高島屋社長は、5年後の全国百貨店の売上高を5.2兆円と云っていることから、上記のごとく激しい減少では無い。5年間の売上高減は、

                  5.2兆円
               ──────  =△ 0.154                             
                 6.15兆円

△15.4%の減少となる。

 高島屋社長は非現実的なことを云っているのでは無い。
 極めて現実的なことをいっているにすぎない。

 現在の状態で百貨店業界があれば、遅かれ早かれ百貨店86社の売上高は、イオン一社の売上高に負けてしまうことから、百貨店業界は真剣になって業界の発展を創意工夫して考えなければいけないという警鐘を、高島屋社長は鳴らしたのでは無かろうかと私は判断する。

 高島屋社長の鈴木弘治氏の今回の発言について、私は別なもう一つの見方を知る。

 一流企業のトップたる社長は、5年先まで数値をもって洞察して企業経営していることを今回改めて知った。
 逆にいえば、5年先の企業のあり方を洞察出来ない人は企業のトップになってはいけないと云うことであろう。
 5年後を洞察して経営出来ない人がたまたま社長になった場合、その企業は停滞若しくは衰退の道を歩むと云うことを示唆することになる。

 イオンとて無制限に売上高が伸びる訳では無い。
 いつかは売上高の伸びが止まる時が来る。

 現実として、2009年に5.23兆円の売上高で、一つのピークを迎えている。

 国内の消費は限界に近づきつつあり、新しい多くの商品開発をしなければ、売上高は伸びない。

 海外に市場を求めて行く方法もあろう。

 百貨店の競争相手は、なにもイオン一社のみではない。
 イオンに負けず劣らずのイトーヨーカドーのセブン&アイ・ホールディングスがある。

 セブン&アイ・ホールディングスの2012年2月期の売上高は4.78兆円(2011年2月期は5.12兆円)である。

 イオンとセブン&アイ・ホールディングスの2社で、現在既に売上高10兆円に200億円足らないだけの売上高である。

 その他国内の小売業の売上高を左右する一つの要因として、インターネットによる商品販売の存在を無視することは出来ない。

 
  鑑定コラム887)
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